2012年12月3日月曜日

呼吸する家をつくる”スーパー白洲そとん壁”

 北海道由来の高断熱・高気密住宅、大学時代にお世話になった先生が中心となって新木造在来構法が開発されたのは、今からもう30年も前のことになるが、グラスウールによるこの充填工法は首都圏では結局普及しなかった。その理由は簡単で、断熱の伝統の無いこの地域では大工さんが防湿気密シートをきちんと貼る、という認識がなく、施工者に敬遠されて来たからである。

 「外断熱」がブームになったのは、それが充填断熱より優れているからではなく、単に施行が楽だったからに過ぎない。それをメーカーや施工者が如何にも充填断熱より優れている様に装って、消費者に高い買い物をさせていた、というのが実態である。
 しかし、今でも高断熱・高気密住宅は魔法瓶の様な住宅で、関東という温暖地に向かない、というイメージを持ち続けている人は以外と多い。そんな人に限って、断熱も気密も中途半端な家の中で石油ストーブを炊いて、この上ない不健康な生活をしているのである。

   さて、北海道の様な寒冷地においては、冬場の内外の温度差が大きいので高気密でなければ途端に内部結露を起こしてしまうのだが、実は、首都圏の様な温暖地においては、高気密でなくとも高断熱の家をつくることができる。

 透湿性の高い材料を組み合わせることで、内部結露を起こさずに室内で発生した水蒸気を外部に排出してしまう外壁を構成する事ができるのである。

 外壁通気層を設ければ、選択できる素材は以外と多いのだが、通気層を設けない本当の「呼吸する壁」をつくることができる外装材が唯一ある。

 それは、高千穂の「スーパー白洲そとん壁」で、九州のシラス大地から生まれたこの材料は透湿性が高く、それでいて防水性がある左官材である。セルロースファイバーとこのスーパー白洲そとん壁を組み合わせた外壁は、今のところ唯一の「呼吸する壁」と言えるだろう。

 写真は私の現場ではじめて白を使ってみたところ。塗り始めは殆どセメント色で、色を間違っているのではないかと心配になったが、乾いてくるとだんだん白っぽくなってきた。しかし、最終的に真っ白になる訳ではなく、やはり少しグレーがかった色に落ち着いた。

 外壁の左官仕上げは、いつもクラックが問題になるが、そとん壁は殆どその心配が少なく、例えクラックが発生しても、何か魔法の液体の様なものを塗ると、すぐにクラックが消えてしまう。

 通常、「掻き落とし仕上げ」とするが、ザックリとした感じが重厚感を感じさせる。掻き落とし仕上げの場合、出隅部分は掻き落としができないので、縁取りをした感じになるが、それが嫌な場合は「スチロゴテ仕上げ」にしたりする。いづれにしろ、塗り壁としてはなかなかの優れものである。