2010年6月20日日曜日

セルロースファイバーの魅力



 セルロースファイバー断熱材(以下、CFと表記)は、まだ断熱材と言えばグラスウールしか知らなかったような時代からすでにあったのですが、未だに断熱材の我が国におけるシェアを見ると、グラスウールが約50%を占め、次に外張り断熱で躍進している発泡プラスチック系の断熱材が入り、最近では自然系の断熱材も種々出て来ていますが、CFはほんの2%に過ぎません。
 この様にCFは未だにマイナーな存在に甘んじていますが、実はなかなかあなどれない存在!
 CFが結構、一般に知られる様になったのはつい最近のことで、山本順三さんの「この本を読んでから建てよう」とか「無暖房・無冷房の家に住む」という本でCFを強烈にアピールしてからです。
 この山本順三さん、とっても口の悪い人で、本書の中で名だたる大学の研究者達をバサバサと切っています。私の恩師もバッサリ切られました(笑)。口は悪いけど、言ってる事は結構正論で、実際に断熱施工を営んでいる断熱屋のオヤジの経験値には圧倒されるものがあります。
 さて、CFは皆さんご存知の通り新聞古紙から作られる木質繊維の断熱材です。充填断熱材として使用される断熱材の多くはマット状のもので、壁の中に筋交いなどがあるときちんと充填するのが難しいのに対し、CFはホースで壁の中に吹き込まれるため、壁の複雑な形状の中にもきっちりと充填され、断熱不良箇所ができ難いという利点が有ります。しかし、私がお薦めする理由は、やはりその保湿性能にあります。即ち、高気密・高断熱も透湿抵抗理論もよく分かっていない本州のビルダーや設計者が充填断熱を計画するなら、最も内部結露に対する安全性の高い断熱材であると言う事ができます。高気密・高断熱住宅で指摘される冬場の過乾燥や室内の反響音の問題についても、CFは効果的であると言えます。
 さて、CFのメーカーは製紙業界大手が中心となっていますが、小さな会社が夫々独自の違いを出しています。例えば、デコスはCF中に糊の成分を入れて、施工後に自沈して上部に隙間がでてしまう、というかつてのCFの欠点を解消しています。しかし、糊で固めるCFというのは廃棄処分時の問題等を考えると個人的にはちょっと。そこで私は「マツナガ」のCFを使っています。
 「マツナガ」のCFは先の問題を麻の繊維を混入する事で解決しています。しかし、このCFはもの凄い高密度で(64k/m3くらい)で挿入されるので、元々沈下するという感じは全くありません。また、当然、断熱材なのですから、CFの断熱性能が気になるところですが、これは同じ厚みで発泡プラスチック系の断熱材と同等の断熱性能を発揮しています(通常、繊維系の断熱材は100mm厚で、発泡プラ系の50mm厚相当)。これは、やはりその密度の高さによるものと言えます。
 羊毛断熱材もCF同様、保湿性、吸放湿性のある断熱材として自然住宅を売るビルダーに珍重されていますが、やはりその密度が低いので断熱性能は全くCFには及びません。また、羊毛断熱材で私が気になるのは、それは100%オーストラリアやニュージーランドからの輸入に頼っているという事です。「フードマイレージ」という言葉が少し前に流行りましたが、断熱材の様な軽くてかさばるものを遠方から輸送エネルギーをかけて運んでくる、というのは、他の自然系の断熱材同様、それだけで環境に対する矛盾を感じます。
 CFは元々木の繊維ですから自然素材と言って良く、国内生産される上に一時生産エネルギーが最も小さい断熱材です。断熱性能が高く、その保湿性が内部結露の危険性を緩和してくれるCFは、一押しの断熱材といっていいでしょう。但し、専門業者による責任施工となるので、発泡プラ系の断熱材による外張り断熱と同等の金額になります。しかし、自然系を望むならやはりCFということになります。
(写真はマツナガのMS工法)

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