北海道由来の高断熱・高気密住宅、大学時代にお世話になった先生が中心となって新木造在来構法が開発されたのは、今からもう30年も前のことになるが、グラスウールによるこの充填工法は首都圏では結局普及しなかった。その理由は簡単で、断熱の伝統の無いこの地域では大工さんが防湿気密シートをきちんと貼る、という認識がなく、施工者に敬遠されて来たからである。
「外断熱」がブームになったのは、それが充填断熱より優れているからではなく、単に施行が楽だったからに過ぎない。それをメーカーや施工者が如何にも充填断熱より優れている様に装って、消費者に高い買い物をさせていた、というのが実態である。
しかし、今でも高断熱・高気密住宅は魔法瓶の様な住宅で、関東という温暖地に向かない、というイメージを持ち続けている人は以外と多い。そんな人に限って、断熱も気密も中途半端な家の中で石油ストーブを炊いて、この上ない不健康な生活をしているのである。
さて、北海道の様な寒冷地においては、冬場の内外の温度差が大きいので高気密でなければ途端に内部結露を起こしてしまうのだが、実は、首都圏の様な温暖地においては、高気密でなくとも高断熱の家をつくることができる。
透湿性の高い材料を組み合わせることで、内部結露を起こさずに室内で発生した水蒸気を外部に排出してしまう外壁を構成する事ができるのである。
外壁通気層を設ければ、選択できる素材は以外と多いのだが、通気層を設けない本当の「呼吸する壁」をつくることができる外装材が唯一ある。
それは、高千穂の「スーパー白洲そとん壁」で、九州のシラス大地から生まれたこの材料は透湿性が高く、それでいて防水性がある左官材である。セルロースファイバーとこのスーパー白洲そとん壁を組み合わせた外壁は、今のところ唯一の「呼吸する壁」と言えるだろう。
写真は私の現場ではじめて白を使ってみたところ。塗り始めは殆どセメント色で、色を間違っているのではないかと心配になったが、乾いてくるとだんだん白っぽくなってきた。しかし、最終的に真っ白になる訳ではなく、やはり少しグレーがかった色に落ち着いた。
外壁の左官仕上げは、いつもクラックが問題になるが、そとん壁は殆どその心配が少なく、例えクラックが発生しても、何か魔法の液体の様なものを塗ると、すぐにクラックが消えてしまう。
通常、「掻き落とし仕上げ」とするが、ザックリとした感じが重厚感を感じさせる。掻き落とし仕上げの場合、出隅部分は掻き落としができないので、縁取りをした感じになるが、それが嫌な場合は「スチロゴテ仕上げ」にしたりする。いづれにしろ、塗り壁としてはなかなかの優れものである。
(株)野平都市建築研究所が、これまでの家づくりで使用してきた様々な建築材料の中から、これはいい! と思ったものを独断と偏見で紹介するブログです。ぜひ、あなたの家づくりの参考にして頂ければ幸いです。
2012年12月3日月曜日
2010年9月20日月曜日
すっきりと目立たない天井点検口
木造住宅などではあまり天井点検口を設けることは少ないが、
ちゃんとした第三種24時間換気システムなんかを付けると
排気ファンを納めた位置に天井点検口が必要となる。
通常のアルミ既製品の点検口はアルミの枠が目立って頂けないが、
今日、紹介するのはナカ工業の 「ハイハッチMM (目地タイプ)」
これは目地棒の様に枠が細く目立たない、すっきりとした目地タイプの天井点検口。
道具不用で開閉できるスライドロック。
枠は標準はアルマイト仕上だが、白目地タイプもある。
枠内に納める面材は通常プラスターボードの厚みを想定して作られているが
今回はサワラの板15mm厚張りの天井に付けるので
板厚を薄くスライスして納めてもらった。
昔から愛用している点検口である。
2010年9月8日水曜日
断熱性に優れたお洒落なスクリーン
今日紹介するのは、セイキ総業の「ハニカムサーモスクリーン」
ポリエステルの不織布でできたスクリーンで、構造が蜂の巣の様なハニカム構造になって、中に空気層を形成し、夏は遮熱効果が、冬は断熱効果が非常に高いスクリーン。
断熱サッシと合わせれば、熱貫流率はサッシだけの場合の半分近くまで落とせる。窓廻りは如何に断熱サッシを使っても、外壁の断熱性能の1/5〜1/7位しかないから、熱的にはいずれにしろウィークポイントとなる。
ハニカムサーモスクリーンは、窓廻りのこうした弱点をカバーしてくれるので北国では定番だが、首都圏では殆ど知られていない。しかし、最近流行りの「内窓」を設置するなら、こちらの方がずっとスマートでお薦め。
柄物はないが色の種類が豊富で、シンプルでお洒落。
窓廻りをレースとカーテンとしたい場合は別だが、ハニカムサーモスクリーンは閉めると障子紙の様に外光を柔らかく拡散してくれる。
また、開けると蜂の巣状の空洞がしっかり畳まれてすっきりと上部に納まる。
やはり、価格がちょっとネックになるが、設計の段階からしっかり断熱計画をするなら、結構使えるアイテムである。
2010年8月16日月曜日
土台気密パッキン「ノルシール」
土台気密パッキンとは主に高気密・高断熱住宅で使われるものである。
温暖地においては、床下を「外」と考える伝統があるので、床下換気口を付けたり、最近では基礎天端と土台に間に基礎パッキンで隙間を空けて、そこから床下の換気をしているのが一般的だが、高気密・高断熱住宅では床下も「室内」と考えるので、基礎天端と土台の間に隙間ができない様にするために、「気密パッキン」が必要になる。
この気密パッキンはメーカー各社から出されているが、その多くはEPDMゴム発泡体で作られている。
EPDMフォームは高圧縮時には高い気密性を発揮するが、少しでも圧縮率が下がると気密性能が大幅に低下してしまうという欠点がある。
ここで紹介する「ノルシール」はPVCを機材とした独立気泡構造を持つ発泡シール材で、元々、機械関係の接合部の気密、防水パッキンとして使用されており、対薬品性、摩耗性に優れ、柔軟性に優れており、経時変化に対しても、また、低圧縮時においても高い気密性を保持する。
住宅用としてはまだメジャーではないが、基礎天端に不陸があっても気密性能を発揮できるので、こだわりのある設計者にとっては、ちょっと隠れたお薦め建材である。
住宅の土台用気密パッキンとしての製品「ノルシール」は、「共ショウ」という会社から発売されており、防湿フィルム付きで位置決めがし易い様になっている。
2010年8月10日火曜日
石化する塗り壁「モノプラルKS」の魅力

イタリアの街の旧市街を歩くと、外壁の大きな石積みに圧倒されるものだが、それもおよそルネサンス期までの建物で、ヨーロッパの町並みを構成する建物の多くはレンガ積みに塗り壁を施されたものである。
フランス等で長年培われたそうした塗り壁材を日本に取り入れたのがゲーテハウスの「モノプラルKS」である。
これは生石灰を主成分としているため、施工後、長い年月をかけて空気中のCO2と反応して石化、即ち、石灰岩になってゆく、という代物。
天然顔料によりカラーバリエーションも豊富で、色落ちの心配もなく、塗り替えの必要がない。
防水性が高く、かつ透湿性があるため、壁内結露の心配も少ない。
しかし、この材料の魅力は、まず、壁に模様を入れたり、ボーダーを入れたり、ひとつの平面を自由に塗り分けられることである。
さらに、自由に凹凸を付けたり、レリーフを施すこともできる。
マットな重厚な感じのテクスチャーもなかなかいい。
これでヨーロッパ調の家が自由に造れるが、日本という土地でこれを使ってどうデザインするかは、設計者の力量にかかっている。
2010年8月6日金曜日
木造軸組工法の盲点は釘にあり!
最近の住宅は、筋交いだけでなく構造用合板で壁倍率を確保することが一般的となって来ました。設計においては簡単な計算で木造住宅の耐震強度を持たることができますが、しかし、現場では意外と強度の足りない耐震壁が作られているのです。問題は「釘」にあります。
基準法では使用する釘の種類やピッチが決められているのですが、現場では間違った釘が使われていることが多々あります。釘については実は、設計者も大工さんもよく分かっていないのです。ツーバイは元々枠組み工法なので釘が命であり、ツーバイ専用のCN釘(太め鉄丸くぎ)が使われていますが、在来ではN釘(鉄丸くぎ)を使わなければならないことになっています。しかし、法律で決められていながら、関東地方にはN釘が殆ど流通していなかったという事情(木構造建築研究所 田原の田原所長に伺いました)もあり、大工さんも殆どよく分からずに梱包用に使う様なNC釘(ロールくぎ)などが使われていたりしました。これでは、計算上の強度はでないため、法改正された関西淡路大震災以降も在来工法の住宅では結構、強度不足の住宅が多く存在するものと思われます。
また、現在は殆ど釘打ち機が使われるので、釘頭が合板の中にめり込んでいる場合も多く、これもまた強度不足の原因になっています。
そこで、今日、紹介するのが安田工業の「スーパーLL釘」です。これはステンレス製の釘で、釘胴部にスクリューニング加工を施すことで抜けに対処し、釘頭を大きくする事で釘頭の合板貫通を防止したものです。勿論、国交省の認定を受けた商品で、その実験結果からも釘によって耐震強度が大きく違ってくることを実証しています。
値段は勿論、少し高いですが、家一軒分で+5万円程度のものです。地震国日本で安全に賭ける費用としては微々たるものと言えるでしょう。
ちなみに、安田工業は安田財閥の創始者、安田善次郎が作った東洋初の洋釘会社です。
(写真左からNC釘、N釘、スーパーLL釘)
2010年7月31日土曜日
外付けブラインドシャッター

夏場の日射遮蔽の手段は、軒の出や庇の長さをきちんと計算して設けるのが、今でも最も効果的な方法である。
しかし、東面や西面については太陽高度が低いので、軒の出や庇では対応できない。
昔ならヨシズを下げて対処したものだが、いづれにしろ、日射は部屋の外で遮るのが肝要である。
最近は土地が狭いためか、デザイン的にモダンな感じが求められるためか、屋根は殆ど軒の出はなく庇もない家が多い。
そこで、夏場の日射を遮るのはブラインドやカーテンに頼らざるを得なくなるが、窓の室内側に設けるブラインドでは太陽の熱を50%も遮る事はできない。
ここで紹介するのは、オイレスECOの電動式ブラインドシャッター「サンシャディ」である。
サッシの外側に取り付け、自由に羽根の角度を調整でき、シャッターとして完全に閉め切ることができる。
この効果は抜群で、どの方位に対しても日射をしっかり遮る事ができるので、室内の温度環境をしっかり保つ事ができる。
オイレスECOでは、この他、手動式のブラインドシャッター「ミラレス」もあり、これらは、サッシメーカーのシャッターと比べてもその機能性と意匠性が高く、愛用の一品である。
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